出版業界において、複数の出版社に同時に企画を売り込むことは、基本的に道義的な問題があると言われています。
出版社の担当者は多くの案件を抱えながら迅速に判断を下す必要があるため、著者が誠実に対応することは、信頼関係を築き、企画を優先してもらうために非常に重要なのです。
そのためにも、1社1社に丁寧に売り込みを行い、その都度、結果を待つようにしましょう。
しかし、効率を考えると、なかなかそんな悠長なことは言ってはいられません。
では、そのような場合、どう対応すべきかをお伝えします。
まず、複数の出版社に同時に企画を提案する際には、必ず「他にも売り込みをかけている」ことを相手に伝えることが大切です。
これは、他の出版社が動いていることを知ることで、早めの意思決定を促す効果もあります。
また、出版社も他の競合がいることを理解した上で判断を下すため、正直に状況を伝えることで信頼を損なうリスクを避けることができます。
また、複数の出版社に企画を同時に提案する場合、事前にいくつかの異なる切り口の企画を用意しておくとよいでしょう。
例えば、各出版社ごとにそれぞれのカラーに合った切り口で企画を提示し、異なる企画として受け取られるように調整することで、同じテーマの企画であっても、より採用されやすくなります。
そして、複数の出版社から前向きな反応が得られた場合、理想的なのは先着順で進めるのが良いでしょう。
出版社同士の競合を避けるために、誰が一番早く意思表示をしてくれたかという基準で進めるのが、公平かつトラブルを避ける最善策です。
ただし、著者や企画のバリューが高い場合には、待ってもらえる可能性もあります。
企画が魅力的であれば、出版社側も他社より良い条件を提示してくれることがあり、好条件を引き出すことができるかもしれません。
とはいえ、このようなケースは稀であり、多くの場合、チャンスを逃すことのないように迅速に行動することが重要です。
さらに、同時進行で複数の企画を進める場合には、スケジュール管理が非常に重要です。
並行して別々に企画を進めるとなると、進行が遅れるリスクや販促にかけるパワーが散漫になってしまう場合もあります。
それだけに、複数の出版社と同時に交渉を進める場合、それぞれの出版社の編集者と進行スケジュールや原稿の締め切り、プロモーションの段取りに対してしっかりとした計画を立てることが不可欠です。
ちなみに、それぞれの出版社から文句を言われないようにするためには、発刊の間隔を3ヶ月以上あけるようにしましょう。
とはいえ、やはり理想的なのは、複数の企画を同時に進めずに1つずつ丁寧に対応することです。
複数の企画を並行して進行させるのことは、売れっ子作家のような感覚になり、魅力的に感じるかもしれませんが、結果的にどっちの企画も中途半端になってしまう可能性がほとんど。
せっかくのチャンスを大切にしながら、着実に成果を積み上げることが、息の長い著者として活躍できる近道だと思います。