交流会などで、私が出版関係の仕事をしていると知られると、よく耳にするのが「今、どんな企画を求めていますか?」という質問です。
一見、興味を持ってもらえているようで悪い気はしませんが、正直に言えば、この質問に対しては少々困惑します。
なぜなら、編集者としての立場からすると、「どんな企画を求めているのか」を第三者に教える義務も理由もないからです。
おそらく、質問をしてくる人は、「もし自分が対応可能なテーマであれば、それに基づいて立候補してみよう」という意図があるのでしょう。
しかし、ここで重要なのは、その順序が間違っているということです。
本来であれば、自分自身が得意とするテーマや独自の視点を整理し、それを編集者に提案する形が自然です。
編集者は、提案を受け取った後に「これは出版に向いているかどうか」を判断する立場にあります。
ですので、編集者に何を求めているのかを聞き出すのではなく、まずは自分の強みや専門性を編集者に伝えることが優先されるべきなのです。
交流会という場では、編集者は決して新しい企画を発表するために参加しているわけではありません。
そのため、編集者がどんな企画を求めているかを探るよりも、むしろ自分の企画やアイデアをしっかりと形にしておき、それをきちんと伝えられる準備を整えることが、出版を目指す上で重要です。
まず、交流会での編集者との会話は、あくまで「きっかけ」だと心得ましょう。
その場を利用して良い第一印象を残し、後日、具体的な提案を送る流れが理想的です。
なので、「今、どんな企画を求めていますか?」という質問ではなく、「私はこういった分野に強みがあり、こういった形で読者に価値を提供できる企画を考えています」という形で、自分の準備を見せられるかが重要です。
そして、可能であれば、仲良くなって、編集者のニーズや方向性をさりげなく掴み取ります。
そして、その情報をもとにスピーディーに企画書に落とし込み、連絡してみましょう。
とはいえ、最初に編集者と接点ができたときに、こちらの本気度が伝わる程度に企画を仕上げておく必要があります。
具体的には、編集者に提案する企画は、最低限、以下のような点を考慮するようにしてください。
第一に、自分の企画が誰に向けて、どのような価値を提供するのかを明確にすること。
第二に、そのテーマがどのような独自性を持ち、競合との差別化ができているかを示すこと。
そして第三に、それが市場の需要にどう応えているのかをデータや根拠をもとに説明することです。
こうした準備が整っていることで、編集者の興味を引く確率が格段に上がります。
編集者との接点をうまく活用するには、自分の本気度を伝え、編集者から情報を引き出し、スピーディーに自分から動く姿勢が求められます。
編集者に求めるのではなく、自分が編集者にとって魅力的な存在になることを目指して努力を続けていきましょう。