多くの出版希望者の方から企画書を拝見する中で、時折強く感じることがあります。

それは「この企画は本気で売れると考えていらっしゃるのでしょうか?」という疑問です。

 

出版というものは、単に思いつきや勢いだけで成立するものではありません。

 

実際にそう問いかけると、ほとんどの人は「このような読者ニーズがあるので、売れると思います」と自信を持ってお答えになります。

では、そこでさらに「何部くらい売れると見込んでいますか?」とお尋ねすると、「1万部は売れると思います」と、根拠の薄い数字が返ってくることが少なくありません。

そこで、さらに一歩踏み込んで、「仮にその1万部が売れなかった場合、残った部数を買い取っていただけますか?」と伺うと、多くの人が沈黙されます。

 

もちろん、実際に買い取っていただくことが目的ではありません。

ただ、その問いに対して「はい、覚悟はできています」と答えられるほどに、企画の内容と市場性を真剣に検討し尽くしているかどうかを確認したいのです。

つまり、売れる企画の条件とは、発案者自身がリスクを取ってでも世に出したいという強い意志と、その意志を裏打ちする市場分析や読者理解の深さがあることです。

編集者が出版企画を評価する際に重視するのは、まさにその点だったりします。

単なる思い入れだけではなく、「誰に向けた本であり、その読者が何を得られるのか」「他の類書と比べて何が新しく、どのような切り口があるのか」といった編集者の評価基準を満たすような内容が求められるのです。

 

 

企画が採用され、書籍が出版されるまでには、編集者、デザイナー、営業担当、広報など多くの関係者が関わり、出版社としても印刷費や広告費といったリスクを伴う投資を行います。

そのような中で、発案者が「売れると思うけど、そこまでの責任は持てません」という姿勢で臨んでしまっては、信頼関係は築けませんし、出版実現の可能性も低くなるのは当然だとは思いませんか?

 

出版とは決して個人の夢の実現だけではなく、ビジネスであり、社会に対して価値を提供する行為でもあります。

 

実は、当方のブログデザインをやや堅い雰囲気にし、プロフィール写真に強面の写真をあえて使っているのも、「軽い気持ちの方はどうかお引き取りください」というメッセージを込めているからです。

以前は出版企画書の無料添削サービスも行っておりましたが、あまりにも安易で準備不足な企画書が多数寄せられるようになったため、現在はそのサービスを終了させました。

今後は、出版について真摯に学び、準備し、責任を持って企画に取り組む方だけを対象に、私も全力で支援していこうと思います。

 

それらを踏まえた上で、編集者に「この企画なら売れる」と思わせるだけの裏付けがあって、出版の扉は開かれるのです。

出版という世界は、決して狭き門ではありませんが、本気で向き合い、地に足のついた準備を重ねる人でなければ通れない門であることは、是非、心に留めておいてください。