長年、出版業界に身をおいていると、業界外の人との意識にズレを感じます。

それは、スケジュールに対する意識です。

 

 

私が出版業界に入って、一番最初に叩き込まれたことは、「親の死に目に会えなくても締め切りを守れ!」ということでした。

これは、今でも出版業界では慣習化しております。

 

ちなみに、その理由は、本一冊作るのに多くの職種の人たちによる、幾重にも及ぶ工程を経るため、その過程において一人でもスケジュールを守れない人がいると、その後の工程に関わる多くの人たちに迷惑をかけることになるから。

 

そのため、出版のスケジュールは、各職種の人たちとのスケジュールを調整した上で、かなり緻密に組み上げていきます。

 

本を出版する著者は、そこ工程の一番上流にいるため、著者の原稿が遅れると、その先の全ての工程に影響が出てしまい、多くの人たちに迷惑をかけることになるのです。

 

例えば、著者が半日原稿を遅れたとします。

半日であれば、工程上、容易に吸収できるレベルではありますが、朝から原稿待っていた次の工程の人からすると、何もできずに半日を過ごしてしまうのです。

そして、その半日の遅れを取り戻すために、その人は徹夜をしてその遅れを吸収することになります。

 

著者の身勝手な遅れで、いきなり定時帰宅の予定が徹夜になってしまうのです。

自分の身に置き換えて考えてみれば、それがどれほど精神衛生上、よくないことかは分かりますよね?

 

しかも、それだけではありません。

徹夜で作業を行うということは、その人の残業代や深夜残業代など、本来、発生しない目に見えないコストも発生します。

当然、そのコストは誰も負担してもらえないので、各自の持ち出しになるのです。

半日でも影響を大きいのですから、1日以上の遅れは、さらに問題を深刻化します。

場合によっては、発刊中止になることもあるでしょう。

 

スケジュールの管理は社会人の基本ですが、「少しぐらい」とか、「半日なら」と、軽く考えがちな傾向を感じてしまいます。

しかし、出版におけるスケジュールは、“絶対”です。

あなたが遅れたら、その遅れを他の人が取り返すために苦労しなければなりません。

 

だからこそ、出版を目指すのであれば、締め切りに対する意識をしっかり持つようにしてください。

例え、一冊目は後工程でなんとか吸収して大事に至らなかったとしても、それを挽回するぐらいの売れ行きでない限り、同じ出版社で二冊目が決まることはないでしょう。

 

また、それぐらい大切な締め切りに対する意識な訳ですから、当然、出版前の打ち合わせでも見られています。

平気で5分、10分と遅れて来る人は、スケジュール管理の意識が低い著者になると認識されてしまうので、日常的に意識したほうがいいですよ。

こういうところで出版が決まらないこともあり得ますので、それって非常にもったいないですから。