先週は、数多くの出版企画書をチェックしたのですが、正直なところ、かなり凹みました。
出版を志す方々がせっかく貴重なノウハウや体験を持っているにもかかわらず、その魅力が伝わらない企画書があまりにも多かったのです。

私は普段、出版セミナーなどで「出版では、文章力とノウハウ(価値あるコンテンツ)のどちらが重要か」と質問を受けることがあります。
その際には、迷うことなく「ノウハウの方が圧倒的に重要です」とお答えてました。
しかし、いくら中身が素晴らしくても、最低限の文章力が伴っていなければ、出版のチャンスは遠のいてしまうのが現実です。
出版企画書にある『企画概要』は、重要な項目です。
ここでは「誰に」「何を」「どのように伝えるのか」を明確にし、600〜800文字程度で簡潔にまとめることが求められます。
ところが、多くの企画書ではこの短い文章ですら、日本語として成り立っておりません。
誤字脱字が多かったり、主語と述語の対応が取れていなかったり、構成がばらばらだったりすることも…。
こうした企画書は、どんなに内容が優れていても、編集者に採用されることはありません。
もしかしたら、「結局、出版に文章力も必要なんじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、読み手に理解してもらえる最低限の文章力は、出版を目指す上での基本的な条件だというのは理解してください。
そして、さらに問題なのは、文章の丁寧さや読みやすさに対する配慮が感じられない点です。
改行のルールが統一されていなかったり、文章の途中で不自然に改行が入っていたりすると、それだけで読み手の集中力を削いでしまいます。
出版企画書とは、編集者に「あなたの企画は読む価値がある」と感じてもらうための最初のプレゼン資料です。
にもかかわらず、フォーマットが乱れていたり、他社のテンプレートをそのまま流用していたりするのでは、真剣さが伝わりません。
編集者は毎日のように多数の企画書を読んでいます。
その中で目に留まるのは、内容だけでなく、文章の端々に「読み手への敬意」が感じられる企画書なのです。
出版は、文章そのものを職業とする世界です。
だからこそ、たとえ企画の核心がノウハウや経験、実績にあったとしても、文章の品質を軽視してはいけません。
読みやすく、誤解のない言葉で伝える力は、出版を成功させるための最低限のマナーであり、編集者との信頼関係を築くための土台でもあります。
自分の伝えたい価値を最大限に活かすためにも、文章力の基本を磨き、読者と編集者の双方に「伝わる企画書」を意識して書くことが、出版への確実な近道なのです。


