書籍の出版を目指す人とお話しする機会が増える中で、改めて感じることがあります。
それは、「出版企画はスピードが命である」ということです。
多くの人が、「このテーマで本を出したい!」と熱意を持って相談に来られますが、その内容を伺うと、すでに出版が決定している企画と重なっているケースが少なくありません。
近年、読者の嗜好は多様化し、ニッチなジャンルの本でも一定の需要が生まれるようになりました。
そのため、一昔前と比べると出版の機会は増えているように見えます。
しかし、その一方で、一つひとつの市場の規模は縮小しており、似たようなテーマの本が何冊も続けて出版されることは稀です。
つまり、「この分野で本を出したい」と考えているのは自分だけではなく、同じようなアイデアを持っている人が他にもいる可能性が高いのです。
そのため、企画を思いついたら、できるだけ早く動くことが求められます。
特に、出版社側の視点に立つと、同じジャンルやテーマの本を短期間に何冊も刊行することはリスクでしかありません。
売上が分散してしまうということもありますが、読者が飽和状態に陥り、売そのジャンルやテーマに飽きられてしまうことで、本来であればもっと売れていた本も売れなくなる事態に陥ります。
そのため、先に企画が通った本が優先されることになり、後から似た企画を持ち込んだとしても「すでに類書があるため難しい」と断られてしまうことも珍しくありません。
せっかく優れたアイデアがあっても、遅れを取ることで実現が難しくなることもあるのです。
では、どうすれば出版のチャンスを逃さずに済むのでしょうか。
まず、企画段階で長く悩みすぎないことが重要です。
もちろん、しっかりとした企画を練ることは大切ですが、完璧な企画を作ろうとするあまり、時間をかけすぎると、その間に別の人が先に動いてしまう可能性があります。
出版社が興味を持つのは「完璧な企画書」よりも、「今、売れる可能性のあるテーマ」です。
そのため、まずは大枠を固め、早い段階で出版社にアプローチすることが肝心です。
そして、自分の企画と類書の違いを明確にしていきましょう。
同じテーマでも、切り口やターゲット、構成の工夫次第で差別化することは可能です。
例えば、ビジネス書であれば、「初心者向け」「経営者向け」「実践者向け」など、読者層によってアプローチが異なります。
類書がすでにある場合でも、「どのような点で独自性があるのか」「なぜ、今、この本が必要なのか」を明確に説明できれば、出版社にとっても魅力的な企画として受け入れられる可能性が高まるでしょう。
出版を目指すのであれば、迷っている時間はありません。
思いついた企画はできるだけ早く形にし、出版社に提案することで、出版の可能性を高めることができることは間違いありません。
出せる企画は早いものがちですから。
先を越されて後悔しないように、今すぐ動き出しましょう。