出版企画書を書こうとすると、どうしても「自分はこんな想いでこの本を書きたい」という気持ちを強く出したくなるものです。

実際、それだけ真剣に考えているからこそ、言葉にも熱が入るのでしょう。

 

しかし、編集者が出版企画書で本当に読みたいのは、その想いや熱意よりも、「この本は読者に求められるのか」という点です。

ここがはっきりすると、企画の内容がグッと伝わりやすくなります。

少し視点を整えるだけで、出版企画書は変わまるので、是非、やってみてください。

 

 

まず大切なのは、出版企画書の読者ターゲットを広くしすぎないこと。

「働く女性に向けた本です」と書きたくなる気持ちはよく分かります。

けれども、20代の独身女性と、30代の管理職、40代の子育て中の女性では、日々感じている悩みも、欲しい言葉も違います。

読者ターゲットがぼんやりしていると、企画全体もぼやけてしまいます。

そこで、出版企画のターゲットの決め方で迷ったときは、実在する一人を思い浮かべてみましょう。

お客様でも、知人でも、友人でも構いません。

「この人のために書く」と決めるだけで、伝えるべき内容が自然と具体的になります。

以前、ある方の企画相談に乗ったときも、最初は「多くの人に届けたい」という形でしたが、「いつも相談してくれるAさんに向けて書く」と決めた瞬間に、企画の軸がすっと定まりました。

たった一人に向けることで、むしろ多くの人に届く企画になるということです。

 

次に大事なのは、読者の悩みや不安を中心から考えること。

読者は、本を読むために本を買うのではありません。

自分の困りごとを何とかしたい、少しでも良くなりたいから本を手に取ります。

だからこそ、出版企画書では「その読者は何に悩んでいるのか」「その悩みを本人が自覚しているのか」「その解決策を本に求めるのか」を丁寧に見ていく必要があります。

さらに、その本を実際に書店で手に取り、レジまで持っていけるかという感覚も大切です。

ここまで考えられると、編集者が「この本は読者に求められている」と思える出版企画書に近づいていることでしょう。

難しく感じるかもしれませんが、読者の立場にやさしく立ち戻るだけでよいのです。

 

そして、もう一つ欠かせないのが類書を見ること。

すでにある本を調べると、「どんな切り口が多いのか」「どこが物足りないのか」「まだ十分に語られていないことは何か」が見えてきます。

ここで大切なのは、真似をすることではなく、読者の不満や取りこぼしを見つけることです。

そこに、あなたの企画が入る余地があります。

言い換えれば、出版とは、すでにある本を見たうえで、もっと読者に届く形を考える作業でもあります。

そう考えると、出版企画書づくりは怖いものではなく、安心して進められる安全な挑戦に変わります。

 

出版企画書に著者の熱意が不要だと言っているわけではありません。

むしろ、その熱意を読者に届く形に整える必要があるということです。

編集者が見ているのは、いつも「読者がこの本を欲しいと思う理由があるかどうか」なので、そこを押さえられれば、企画は強くなります。

読者ターゲットを一人に絞り、その人の悩みを見つめ、類書の中に不足を探していく……その積み重ねが、伝わる出版企画書につながっていきます。

あなたの中にある思いは、きちんと形になります。

安心して、一歩ずつ進めていきましょう。