「商業出版はブランディングの近道」という常識
近年、個人起業家や専門家、士業、コンサルタントの間で「商業出版=最強のブランディング手段」という認識が広く浸透しております。
そのため、「自分の専門性を世に示すために本を出したい」「肩書きに“著者”が加わるだけで信頼性が増す」と考える方が非常に増えております。

こうした背景から、出版を“ビジネス戦略の一つ”と捉える方が出版社に企画を持ち込むケースも多く見受けられます。そして多くの方は次のような常識を信じているように思われます。
- 商業出版はブランディングのために行うもの
- 出版社は著者のビジネス目的を理解し、出版を支援してくれる
- 企画書に「ブランディングのため」と書いても問題はない
- 著者の意図が明確な方が出版社にも喜ばれる
こうした認識を持ったまま出版企画を提案すると、編集担当者に「ビジネス目的の企画だな」と見抜かれ、思いがけない対応を受けることがございます。
一見するとこれらはもっともらしく聞こえる常識ですが、実はこの前提には大きな誤解が含まれているのです。
ブランディング目的を前面に出すと、商業出版は遠ざかる
多くの人が気づいていませんが、商業出版において「ブランディングのために本を出したい」という動機を前面に出すことは、出版社からの信頼を損なう大きな要因となります。
出版社の本質的な目的は、読者に価値を届け、売れる書籍をつくることであり、「著者のブランディング」は出版社側の目的ではありません。
むしろ、編集者にとっては次のように映ってしまう場合があります。
- 著者自身の利益ばかりを優先した自己中心的な企画
- 読者への価値提供よりも、自分の肩書き作りが主目的
- 内容よりも著者側の事情が優先されている
そのため、「ブランディング目的」と見なされると、編集者は「この著者は商業出版を理解していない」と判断し、場合によっては高圧的な態度で買取条件や費用負担を提示してくることもあります。
これが俗に言う“足元を見られる”状態です。
つまり、商業出版でブランディングを成功させたいなら、皮肉なことに「ブランディング目的です」と言ってはいけないのです。
この逆説こそが、多くの人が知らない商業出版の真実なのです。
なぜブランディング目的を出すと不利なのか
1. 出版の本来の構造を理解すると、出版社の反応がわかる
商業出版の流れは本来、次のような構造に支えられております。
- 編集者が読者ニーズを把握
- そのニーズを満たす著者を探す
- 読者価値を作れる企画を立ち上げる
つまり、出版社の主語は常に「読者」です。
ところが、著者が「自分のブランディングのため」と発言すると、出版社の主語が「著者」にすり替わってしまい、企画の方向性が出版社の目的から大きく外れてしまいます。
そのため編集者は「著者都合の企画」と感じ、積極的に関わろうとはしません。
2. 商業出版は出版社が費用を負担する投資型モデルである
商業出版では、出版社が制作費・印刷費・流通費などを負担し、その結果として著者には印税が支払われます。
つまり出版社は著者の企画に投資することになります。
そこに「ブランディング目的」が見え隠れすると、編集者は「自分の利益だけ取りながら、費用は全部出版社負担か」と受け取り、投資価値が低いと判断してしまうのです。
3. ブランディング目的と受け取られると、買取条件が提示される理由
編集者は「著者が商業出版にこだわっている」と感じると、相手の心理的弱みを見抜きます。
すると、
- 初版◯冊の買い取り
- 制作費の一部負担
- 事実上の共同出版
といった条件を提示されることがあります。これが“足元を見る”典型例です。
一方、著者が「お金ではなく、本を出したい」「読者に届けたい」と強く主張すると、編集者の態度が変わるケースが多々あります。
「この著者は読者価値を本気で追求している」と判断され、商業出版に前向きに検討されやすくなるためです。
4. 熱意と読者価値が評価されれば、無名でも商業出版は決まる
実際、多くの著者が無名の段階で商業出版を成功させています。その共通点は、
- 読者に役立つ企画である
- 著者の熱意が編集者に伝わっている
- 著者が商業出版の構造を理解している
という点です。
逆に、SNSフォロワーが数万人いても、企画内容が薄く、ブランディング目的が見え隠れしている場合は、商業出版が決まらないという事例は枚挙にいとまがありません。
商業出版を成功させる鍵は「読者価値」と「著者の姿勢」
以上の理由から、「商業出版でブランディングしたい」という思い自体を否定する必要はございませんが、それを前面に出す姿勢は編集者とのコミュニケーションにおいて確実にマイナスに働きます。
商業出版を実現させたいのであれば、
- 読者の役に立つ企画であること
- 著者として書籍にかける真摯な姿勢を示すこと
- “自分主語”ではなく“読者主語”で語ること
この三点こそが、最も重要な成功要因でございます。
あなたの企画が読者に必要とされる内容であれば、必ず正当に評価してくれる出版社が存在します。
だからこそ、早々に妥協して費用負担の条件を飲む必要はありませんし、出版という大きな機会を安売りすべきではありません。
商業出版を実現し、ブランディングにも成功する解決策
最後に、商業出版を成功させたい方が実践すべき行動を具体的に整理いたします。
1. 企画書は徹底して「読者価値」を中心に構築する
読者がどのような悩みを抱え、どのように解決するのかを明確にすることで、編集者の信頼を獲得できます。
2. 出版社との打ち合わせでは「ブランディング目的」を一切匂わせない
あくまでも「読者に届けたい」「どうしても書きたい」という姿勢を示してください。
3. 一社で決めようとせず、複数の出版社に提案する
最初の出版社で足元を見られることがあれば、他社へ堂々と売り込みましょう。
4. 読者に求められるテーマを深く研究する
市場調査を行い、読者のニーズに沿ったテーマで企画を磨き上げてください。
5. 自分が書く必然性を証明する
専門性・実績・経験を整理し、「あなたが書く理由」が明確であることを示す必要があります。
こうした正しいプロセスに基づいて行動すれば、商業出版は現実的な目標となり、結果としてあなたのブランディングにも確実に寄与いたします。
商業出版とは、著者の夢であると同時に、読者へ価値を届ける社会的な営みです。
その本質を理解して臨むことこそが、あなたの出版成功への最短ルートであり、ブランディングを最大化する唯一の道でございます。