「Kindle出版をすると、商業出版できないのでしょうか」
出版相談をしていると、この質問をよく受けます。
すでにKindleを出した方なら、「もしかして順番を間違えたのでは」と不安になるかもしれません。
これから出そうとしている方も、「Kindle出版から始めた方がいいのか、それとも商業出版を先に目指すべきなのか」と迷いますよね。
でも、安心してください。
Kindle出版をしたら商業出版できない、というわけではありません。
実際、Kindleを出したあとに商業出版した人もいます。
ただ、現役の書籍編集者としてお伝えしておきたいのは、Kindle出版が出版社の評価にまったく影響しないとも言い切れない、ということです。
Kindleと商業出版は、どちらが上という話ではありません。
そもそも役割が違います。
Kindleは、自分の判断で出版できます。
自分の考えを形にしたり、読者を集めたり、テーマを試したりするには、とても便利なメディアです。
一方、商業出版では出版社が企画を検討し、制作費を負担して本を出します。
そのため編集者は、「誰に向けた本なのか」「市場はあるのか」「この著者が書く理由はあるのか」などを慎重に見ています。
実際の出版相談をしていて感じることがあります。
まだ何も出版していない人が企画書を持ってきた場合、編集者は企画書を中心に可能性を考えます。
ところが、すでにKindle本がある場合、その本も判断材料になります。
これは必ずしも悪いことではありません。
内容が読者目線で整理され、反応も得られていれば、プラスに働く可能性もあります。
反対に、書きたいことを詰め込んだだけの内容になっていると、「商業出版でも同じ書き方になるのでは」と見られることがあります。
つまり、Kindle出版は出版社から見ると、実際に書いたものを確認できる一つの材料になるのです。
また、Kindle出版をきっかけに商業出版したという話もあります。
ただ、そのケースでは、Kindleそのものより、発売時のプロモーションでの反響などが評価されていることも少なくないのです。
だからこそ、「Kindleを出せば商業出版に近づく」と単純に考えなくて大丈夫です。
実は、ここがいちばん安心してほしいところです。
商業出版を目指すなら、必ず先にKindleを出さなければならないわけではありません。
むしろ商業出版したい企画があるなら、最初に出版社向けの企画として可能性を確認してみる。
企画を見てもらったからといって、Kindleの道が閉ざされるわけでもありません。
商業出版が合わないと分かってからKindleとして形にすることもできます。
私自身、商業出版にも関わりながら、Kindleも出版しています。
KindleにはKindleの面白さがありますし、収益や読者との接点をつくるメディアとしても活用しています。
だから私は、Kindle出版を否定したいわけではありません。
大切なのは順番です。
商業出版を目指すなら、まず商業出版として可能性を確かめる。
Kindleを出すなら、Kindleというメディアの強みを生かして出す。
そう考えると、必要以上に迷わなくて済みます。
出版には一つの正解しかないわけではありません。
今の自分はどちらから始めると可能性を残せるのか。
そこを一緒に整理しながら、無理のない一歩から進んでいけば大丈夫です。


