- 「せっかく本を出すなら、名刺代わりにしたい」
- 「出版をきっかけに、仕事や集客につなげたい」
出版の相談を受けていると、こうしたお話を聞くことがあります。
その気持ちは、とてもよく分かります。
自分の名前が入った本が書店に並び、読んだ人に専門性を知ってもらえる。
そこから相談やセミナーなどにつながったらうれしいものです。
ですから、名刺代わりに商業出版したいと考えること自体は、決して悪いことではありません。
ただ、一つだけ知っておいていただきたいことがあります。
商業出版を目指すとき、編集者に最初から「自分の仕事のために本を出したい」と伝えるのは、あまり得策ではありません。
なぜなら、出版社が最初に考えるのは、著者の集客ではなく、その本をお金を出して読みたい読者がいるかどうかだからです。
ここを理解すると、仕事につなげる出版の考え方が少し変わってきます。
たとえば、ある専門家が自分のサービスを紹介する本を作ろうとしていたとします。
- 「私はこんな仕事をしています」
- 「こんなサービスがあります」
これだけでは、読者にとっては広告に近くなります。
ところが、
- 「こんなことで困っていませんか」
- 「その問題は、こう考えると解決できます」
と読者の悩みから本を組み立てると、意味が変わります。
読者は本を読みながら問題を解決し、その過程で著者の知識や考え方を知ります。
そして読み終えたときに、「もっとこの人の話を聞いてみたい」「困ったときには、この人に相談したい」と思ってもらえるかもしれません。
これが、仕事につなげる出版の自然な形です。
仕事につなげたいからといって、必ずしも大ベストセラーを目指す必要はありません。
広く多くの人に読まれる本は、知名度を高め、講演やメディア出演につながる可能性があります。
一方で、特定の悩みを深く解決する実用書は、読者数がそれほど多くなくても、相談やサービスの依頼につながる可能性があります。
大切なのは、「何部売りたいか」よりも「誰に読んでもらいたいか」を先に考えることです。
まず一人だけ、「自分の本を最も必要としている読者」を思い浮かべてみてください。
その人は何に困っているのか。
本を読み終えたとき、どう変わっていてほしいのか。
そこから企画を考えるだけでも、本の方向はかなり見えやすくなります。
本を仕事につなげるために必要なのは、売り込みを増やすことではありません。
誰に向けた本なのかが明確で、何の専門家なのかが伝わり、出版後もセミナーや商談などで本を活用していくことです。
すると、本は少しずつあなたの代わりに専門性を伝えてくれる存在になります。
不思議ですが、「名刺のための本」を作ろうとするより、「読者のための本」を真剣に作ったほうが、結果として強い名刺になります。
出版と仕事は、対立するものではありません。
順番を少し変えればいいのです。
- 自分のビジネスから考えるのではなく、まず読者から考える。
- その先に、自分の仕事につながる道を設計する。
そんな商業出版なら、読者にも出版社にも喜ばれながら、自分の未来にもつなげていけます。
焦らなくて大丈夫です。
まずは「誰のどんな悩みを、この一冊で解決したいのか」。
そこから、出版の可能性を考えていきましょう。





