「ベストセラー作家の方から編集者を紹介してもらえそうです。これなら出版できますよね?」

出版相談では、こんな質問をいただくことが多くあります。

せっかく著者から紹介してもらえたのですから、「大きなチャンスを逃したくない」「ここで失敗したらどうしよう」と、期待と不安が入り混じるのは自然なことです。

もちろん、著者からの紹介には、きちんと価値があります。

信頼する著者から「一度会ってみてください」と言われれば、編集者が話を聞いてくれる可能性は高まります。

商業出版で編集者を紹介してもらえることは、確かな追い風です。

ただし、紹介が約束してくれるのは「出版」ではなく、「話を聞いてもらえる機会」だと思ってください。

 

 

実際、私が出版相談をしてきた中でも、紹介で編集者に会えたものの、その場ですぐ出版が決まらなかったケースは珍しくありません。

編集者が「面白いですね」と感じても、その後に社内で企画を検討されます。

そこで見られるのは、誰の紹介か以上に、「誰に向けた本なのか」「その読者は本当にいるのか」「なぜこの著者が書くのか」といった企画そのものです。

 

これは、紹介の価値が小さいという意味ではありません。

むしろ逆です。

紹介によって貴重な機会を得られるからこそ、その機会をきっちりと活かせる準備をしておきましょう。

たとえば、面談前に書名案を複数考えておく。

企画概要を、自分を知らない人にも伝わるように整える。

プロフィールに経歴や実績を数字をまじえて具体的に書く。

似た本を実際に読み、自分の企画との優位性や差別化ポイントを言葉にしておく。

こういう何を突っ込まれても対応できるようなような準備をしておければ、その紹介は大きな追い風になります。

 

そして、紹介後に返事がすぐ来なくても、慌てないでください。

出版は社内で検討に時間がかかることがあります。

一ヶ月以上かかることもありますので、不安だからと何度も催促したり、紹介者に「もう一度言ってもらえませんか」と頼んだりするようなことは避けましょう。

それより、次にできる準備へ時間を使ったほうが、未来につながります。

 

そして、紹介を受けたら、面談後に紹介者へ結果を報告することも忘れないでください。

決まったときだけでなく、うまくいかなかったときも、「今回はこういう結果でした。次はここを直します」と伝えることも重要です。

それだけでも、信頼は積み上がっていきます。

 

商業出版は、人脈だけで決まる世界ではありません。

誰かの紹介がなくても、売れそうな企画をつくれれば実現する可能性は高まることでしょう。

そして紹介があることで、その可能性が少し前へ運んでもらいやすくなります。

だから、紹介を「一発勝負」で考えないでください。

企画を整え、準備万端で、編集者に会うようにしましょう。