「あなたの経験、本にしたらいいのに」
そう言われて、うれしくなった一方で、「一般人の自分でも出版できるのだろうか」「何から始めればいいのだろう」と戸惑っていませんか。
期待が膨らむほど、失敗したくない気持ちも強くなるものです。
でも、今すぐ企画書を書いたり、出版社へ原稿を送ったりする必要はありません。
なお、出版には自費出版や電子書籍もありますが、ここでは出版社が費用を負担する商業出版についてお伝えします。
私はこれまで出版相談の場で、「まわりから本を出したらと言われます」という方に何百人もお会いしてきました。
どの方の人生にも、その人にしか語れない出来事があり、お話は本当に興味深いものです。
ですから、勧めてくれた人の言葉も、あなたの経験の価値も、疑う必要はありません。
ただ、私の知る限り、「面白い経験がある」という理由だけで商業出版まで進んだ方はいませんでした。
そこには、一般人が出版する方法を考えるうえで大切な視点があるのです。
友人やお客さまは、あなたの人柄や背景を知ったうえで「面白い」と言ってくれます。
一方、出版社が考えるのは、あなたを知らない人がお金を払って読みたいと思うかどうかです。
出版社は本の制作と販売に大きな費用をかけるため、身近な人の評価だけでは出版を決められません。
また、「人に勧められたから」という気持ちだけでは、途中で迷いやすくなります。
出版社から声がかかるのを待つのではなく、「私は誰に何を伝えたいのか」を自分の言葉で確かめることが必要です。
そして、経験と本の企画も別のものということでもあります。
出版社が知りたいのは、出来事の珍しさだけではなく、その経験が読者の悩みや迷いにどう役立つかです。
経験を本にして出版するには、「私に何が起きたか」を「読者はそこから何を得られるか」へ置き換えていきます。
まずは次の三つを、一行ずつ書いてみてください。
- どんな人に読んでほしいか
- その人は何に困っているか
- 自分の経験から何を渡せるか
次に、似た本を数冊読み、自分なら何を付け加えられるかを探します。
さらに、ブログや小さな講座などで内容を試し、読者の反応と実績を少しずつ積み上げます。
これは、大きな費用や無理な決断を必要としない、安全な挑戦です。
あなたの経験は、そのままなら自分史でも、誰かの役に立つ形へ翻訳できれば、一冊の本の原石になります。
過去の苦労が、まだ会ったことのない誰かを支える知恵に変わるかもしれません。
そう考えると、出版には少し心が弾む可能性があると思いませんか?
本当に出版したいと思えたなら、焦らなくて大丈夫です。
原石を一つずつ確かめながら、読者に届く企画へ一緒に磨いていきましょう。

