商業出版を目指して原稿を書こうとすると、多くの方がまず「自分の想いをしっかり書かなければ」と考えます。

もちろんその想いはとても大切です。

著者の中にある経験や信念がなければ本は力を持ちません。

ただ、原稿を書き始める前に少しだけ立ち止まってほしいのです。

なぜなら、原稿を書くことは、自分の想いを押し出す作業ではありませんから。

 

 

読者は、本を買うとき、本の代金だけを払っているわけではありません。

本を選ぶ時間、読む時間、理解するためのエネルギーも使っています。

つまり、読者はお金だけでなく、自分の大切な時間も預けてくれているのです。

だからこそ、商業出版の原稿には「読者が使った時間以上の価値があった」と感じてもらえる中身が必要になります。

つまり、読者に見合う価値を、ひとつずつ形にしていく作業だと思ってください。

 

ただ、それってはじめてだとなかなか分からないですよね。

 

でも、安心してください。

最初から完璧な原稿を書こうとしなくても大丈夫です。

大切なのは、いきなり走り出すことではなく、安全に挑戦できるように、書く前の確認をしておくことです。

たとえば、以前ある著者さんが「とにかく自分の経験を全部入れたい」と原稿を書き始めたことがありました。

熱量は素晴らしかったのですが、読者にとって何が一番役立つのかが少し見えにくくなっていました。

そこで、企画書に立ち返り、「この本は誰の、どんな悩みを解決する本なのか」を一緒に整理しました。

すると、原稿の流れが整い、読者に届く言葉が自然に増えていったのです。

 

商業出版の原稿チェック項目として、まず確認したいのは六つあります。

一つ目は、独自性があるかです。

すでにある本と同じ話になっていないか、自分ならではの経験や視点が入っているかを見ます。

二つ目は、読者が共感できるかです。

正しいことを並べるだけでは、読者の心は動きません。

「この人はわかってくれている」と思える言葉があるかが大切です。

三つ目は、流れが自然かです。

同じ話が何度も出てこないか、章と章のつながりがわかりやすいかを確認します。

四つ目は、企画書の趣旨からズレていないかです。

書いているうちに話が広がることはよくあります。

だからこそ、途中で安心して戻れる地図として、企画書を見直すことが大切です。

五つ目は、商業出版で出す価値があるかです。

ブログやKindleではなく、出版社が本として世に出す意味がある内容になっているかを考えます。

六つ目は、一定数の読者がいるかです。

自分が書きたいことだけでなく、そのテーマを必要としている人が本当にいるかを確認します。

 

書き終わってから大きく直すのは、とても大変です。

十万文字を書いた後で方向が違うと気づくより、書き始める前に少し丁寧に確認した方が心も時間も守れることでしょう。

そのためにも、こうした商業出版の原稿の書き方の注意点を先に押さえておくことで、執筆は怖いものではなくなりますよ。

むしろ、「この方向で進めば大丈夫」と思える、安心安全な挑戦になるかもしれません。

 

確認しながら進めば、原稿は少しずつ整っていきます。

そして、その積み重ねが「読んでよかった」と思われる一冊に仕上がっていきます。

まずは、書く前のチェックから一緒に始めていきましょう。