書籍を出版したいと思っている方とお話ししていると、「出版の準備はそれなりに進めているつもりなのに、なぜか話が決まらない」「実際に何から手をつけていいか分からず止まってしまう」といった悩みを抱えているケースが少なくありません。

編集者として言えるのは、多くの場合、「読者のスタートからの視点と、著者が見ているゴールからの視点とのズレ」があるということです。

 

 

たとえば、出版に関する情報をインターネットで調べていると、「出版社が求めている企画の特徴」や「通る企画書の書き方」「売り込みの仕方」など、ゴールに近い地点のノウハウが豊富に出てきます。

それらは確かに正しい情報なのですが、実際に出版が決まっていない人にとっては、「知ってはいるけれど、自分にどう当てはめればいいのか分からない」と感じてしまうのではないでしょうか。

これがまさに、ゴールからの視点で語られた情報ということです。

スタートにいる読者にとって、ゴールから語られる言葉にリアリティがなく、自分ごとに置き換えられない状態になっています。

 

「こうすれば出版できます」という情報を読むと、一時的には希望が持てて、「自分にもできるかもしれない」と思えるのですが、いざ行動しようとすると、具体的に何をどこから始めればいいのかが分からず、手が止まってしまう…。

この状態は、ノウハウの質が悪いというわけではありません。

むしろ、情報そのものは的確なのです。

問題は、その情報がスタート地点にいる人にとって、「実行に結びつかない形」で伝えられていることにあります。

 

実は、出版に限らずセミナーやコンサル、ブログなどでも同じような傾向があります。

提供されるノウハウがゴールに立った視点で整理されていて、非常に分かりやすく、論理的に組み立てられていても、それだけでは多くの人が動けないのです。

理由は簡単で、スタート地点にいる人には、目の前に立ちはだかる小さな疑問や不安、迷いがいくつもあるから。

そして、それらが行動を妨げる要因になっているのです。

 

実際、ノウハウそのものは間違っていないのに、それが伝わる文脈や視点が間違っているだけで、出版が実現しないんだとしたら、非常にもったいないことです。

伝える側としても、相手がどこからスタートするのかを理解したうえで、その地点に立ち、そこから導いていく視点が求められます。

これは、出版を決めたいのであれば、絶対に最初にするべきことであり、最も成果に近づく第一歩なのです。