長きにわたる出版不況の上に若者の活字離れ、スマホの台頭など、時代の移り変わりの中で、出版社の倒産も増えてきている状況です。

そこで今回は、出版社が倒産した場合について書きたいと思います。

 

 

まず、出版社とはいえ企業ですので、倒産するまでには民事再生での再建を目指した上で、ダメなようなら倒産となります。

当然、民事再生であれば、再建の可能性は残されますので、印税や原稿料に関しては、額は目減りする可能性はありますが、支払われる可能性はまだあります。

 

しかし、倒産となりますと、出版社は管財人の手に渡り、出版社の人間とさえ連絡が取れなくなります。

例え出版社の人間と連絡が取れたとしても、その人が経営陣でなければ、ほとんど社内の状況について教えてもらえません。

教えてもらえないというより、その人も知らないというのが実情だと思います。

管財人は、その会社に残った資産を計算して、債権者に分配することになるのですが、出版業界の場合、印刷屋さんや紙屋さんは、一冊あたりの金額もさることながら、支払いサイクルが長いため、その間に積み上げた負債はかなりの金額に達します。

しかも、一社の出版社は、決まった印刷屋さんや紙屋さんを使い続ける傾向があるため、ますます被害は大きくなります。

そうなると、残った資産は負債額の比率で分配されますので、微々たる金額しか受け取ることができません。

(今までの経験で言うと、受け取れたことはありません)

 

つまり、出版社が倒産した場合、泣き寝入りせざる得ない状況になるのがほとんど。

 

そうならないためには、事前に出版社の与信を管理する必要があるのですが、今まで景気が良いと言われたことの無い業界でもありますので、細かいポイントはいくつかありますが、与信を管理するにも限度があります。

「大きいから安心」とか、「中小だから危険」ということは、あまり関係ありません。

かといって、与信の管理を意識しすぎて、印税などのの支払い条件に口を出すと、どこからも本を発行できなくなる危険性もあります。

 

では、そんな時、著者はどうすればいいのでしょうか?

 

まず原稿が出来上がった時点で出版社が倒産した場合ですが、本ができあがっていないのであれば、その原稿は他の出版社に売り込むことは可能です。

また、本ができあがっている場合は、一回、市場に出た以上、改めて発刊するには、すでに必要な人は買ってしまっている訳ですから、伸びしろが少ないと判断されてしまうため、かなり売れた本以外は他の出版社による買い取りは厳しいでしょう。

 

すでに本ができていれば本は残りますが、できていなければ他の出版社での出版が決まらない限り、形にすら残らないため、その本に関する労力は全て無駄になってしまいます。

それを踏まえて考えると、本を出す以上、ある程度リスクを覚悟しておくべきなのかもしれません。

それぐらい、経営状況が芳しくない出版社は多いようですから。